研究概要 |
1)イディオタイプネットワークの免疫組織学的解析 マウス抗イディオタイプモノクローナル抗体(抗Id mAb)MK2-3を免疫して作製した8種の抗抗Id mAbを用いて正常組織および良性、悪性皮膚腫瘍における反応性を免疫組織学的に詳細に検討した。抗抗Id mAbは主にメラノサイト系腫瘍と特異的に反応するが、8種の抗体は微妙に異なる反応性を示した。この違いは抗抗Id mAbのvariable regionのheavy chainとlight chainのアミノ酸シークエンスの違いを反映しているものと考えられた。 2)癌ワクチンへの基礎的研究 抗Id mAbを癌抗原の代わりとして投与する場合、効率良く抗抗Id抗体を産出させることが必要である。抗Id mAbの投与法は単独よりも、BCGなどのアジュバントを併用することが重要で、抗マウス抗体の産出は抗体のF(ab')2化やキメラ化により抑制される。 3)HLA Class1の消失のメカニズムの解析 メラノーマ原発、転移巣におけるtransporter associated antigen processing -1,-2 (TAP-1,2)とHLA Class Iの発現をポリクローナル抗体を用いて免疫組織学的に検討した。3者の反応性には強い相関がみられた。原発巣、転移巣では60、80%の症例でその発現の低下/消失がみられた。このことは、メラノーマにおけるHLA class 1の発現低下がTAP分子が深く関与していることを示唆する。癌ワクチン療法では腫瘍細胞がHLA class 1を発現していることが不可欠であり、TAP分子の役割や遺伝子導入なども検討する必要がある。
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