1)皮膚角化細胞由来のHSC-1細胞に、HSV1型(HSV-PH株)を用い、低い感染多重度(MOI)で感染させた。MOI=10^<-6>の場合に、継代可能となり、6週目(第9代)まで少数の細胞でのHSV蛋白の産生が示された。 2)次にHSC-1細胞と神経細胞(NT-2)それぞれに低いMOIでHSV-1を感染させ、感染態度の違いをみた。その結果、神経細胞ではMOI=10^<-7>ないし10^<-8>ではCPEを起こさず、confluentになると、未感染細胞と同様に剥離する事、他方、皮膚角化細胞ではconfluentになると急激にCPEを引き起こした。よって、後者ではMOIの上昇により、急激な反応パターンの変化を示す事が示唆された。 3)以上を基に皮膚角化細胞由来の細胞(HSC-1細胞とSV-HK細胞)と神経系細胞(SK-AS)にHSV-PHをMOI=10^<-2>〜10^<-6>で感染させ、経時的に回収した上清の力値を測定して比較した。 a.細胞系を問わず、MOIが高いほど力値は高く、MOI=10^<-6>では零であり、非常に低いMOIでは形態変化、ウイルスの遊離を伴わない事が示唆された。 b.細胞株間で比較すると、同じ感染効率では神経系細胞では皮膚角化細胞系の細胞に比べて上清の力値は常に高かった。回収した上清は細胞外に排出されたウイルス量の反映であり、皮膚角化細胞系の細胞はMOI=10^<-5>以上では神経系細胞と比較して、細胞内でのウイルスの増殖が抑制され、なおかつ、持続感染を成立させる事なく死に至る事が示唆された。 以上より初感染、あるいは潜伏感染中の神経節での活性化で大量のウイルスが皮膚に現れると、急性感染を生じ、感染細胞は短期間に細胞死〜排除の過程を取り、感染は短期間に終熄するが、皮膚に現れたウイルスがごく少量であると、感染細胞は数週間は生存し続ける可能性があると考えられた。
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