我々は汎発性強皮症の発症にアポトーシスが深く関わっていることを見い出し、アポトーシスに重要な影響を与える様々な因子すなわちリン酸化核蛋白p53・細胞表層分子Fas・TNF receptor・myc・bcl-2・CD40等の局在や発現様式を明かにし、強皮症の発症にアポトーシスがどのように関わっているかを明かにするとともに、結合織の代謝異常ひいては機能保持のメカニズムについて明かにした。病変部皮膚ではTUNEL法により、アポトーシスのメカニズムが作用していることを明らかにした。汎発性強皮症患者病変部皮膚より採取した皮膚片を基質として、アポトーシスに重要な影響を与える様々な因子の抗体を用いた免疫組織化学法により、リン酸化核蛋白p53・細胞表層分子Fas・TNF receptor・myc・bcl-2・CD40等の局在を明かにした。患者リンパ球表面のFASおよびFASリガンドの発現量を測定し、健常人に比し増加していることを証明した。以上の結果から、汎発性強皮症皮膚では表皮下層の有棘細胞層ないし基底細胞層にアポトーシスを生じ、一方でメラノサイトを刺激してメラニン産生を増加させ色素沈着を惹起し、他方でTGF-β・PDGF-AA・PDGFαレセプターなどを介して線維芽細胞を活性化しコラーゲン・ムコ多糖の合成亢進をきたし、線維化を招来するというメカニズムが想定された。また、本症の病態病理にアポトーシスがどのように関わっているかを解明し、制御することにより治療法を確立することを目指し、いくつかの薬物についてその効果を検討した。このことは他の前立腺肥大症、肝硬変などの臓器線維症の診療にも役立つだけでなく、皮膚の老化等の人類が等しく直面する課題の克服に資する所大であった。
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