研究概要 |
1. 1995〜6年に6ヶ月以上経過を追えた成人アトピー性皮膚炎患者117例についてステロイド外用剤の使用状況と臨床経過の関係をレトロスペクティブに検討した.皮疹分布のパターンにより全体を6つの亜群に分けた.広範囲に皮疹の分布する群では重症例が多く血清IgE値の平均値も高かった.117例中104例では当初,顔面の皮膚炎にステロイド外用剤を使用していたが,84例で中止した.うち60例はステロイド外用剤で炎症を制御した結果,ステロイド外用を必要としなくなった.24例では皮膚炎の持続している時期にステロイド外用剤を漸減し中止した.ステロイド外用を中止した結果,顔面や上半身の皮疹の目立つ症例群では数ヶ月の後,紅斑が軽快する例が多かった.全身に皮疹の存在する群では顔面の紅斑の難治例が多く接触アレルゲン,物理化学的刺激,ストレス等の増悪因子について広く検討する必要性を感じた.躯幹・四肢に関しては原則的に皮膚炎の存在する部位にステロイド外用剤を使用し続けたが,本症の長期予後に及ぼすステロイド剤の顔面以外の部位への外用の影響を調べるためには前向きの比較試験が必要であると考えた. 2.レーザードプラー血流計を用いて健常人皮膚の各部位とアトピー性皮膚炎の紅斑の皮膚毛細血管血流量を測定し,ステロイド貼付剤の皮膚毛細血管血流量減少作用を観察した.今後はステロイド外用歴やステロイド外用による臨床的効果の症例による差を背景として考慮しステロイド貼付剤の皮膚毛細血管血流量減少作用を比較検討する予定である.
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