研究概要 |
本研究はステロイド剤の長期外用による皮膚変化を検討することを目的として行なわれた.特に成人アトピー性皮膚炎の顔面紅斑におけるステロイド外用剤の関与を調べるために,ステロイド潮紅と言われる病態に至る過程のステロイド外用剤による皮膚毛細血管収縮作用の変化を局所の微小循環血流量を測定することにより検討することが計画された.しかし顔面紅斑のみでなく皮膚病変全般に対する本剤の効果を適正に把握することが必要であると考え,1.本疾患の皮疹,痒みに対する薬効の客観的評価,2.当科を受診している本症患者におけるステロイド外用剤の使用状況と臨床経過の関連,3.本症の顔面紅斑の皮膚毛細血管血流測定による定量化の試み,の3点について検討した.1.に関しては皮疹のスコア化と痒みの症状の患者申告による評価法,掻破の測定による痒みの評価法について検討した.赤外線ビデオを用いた夜間の掻破の測定は痒みを間接的ではあるが客観的に評価できる方法であると思われた.2.に関しては成人アトピー性皮膚炎患者117例中104例では当初,顔面の皮膚炎にステロイド外用剤を使用していたが,84例で中止した.うち60例はステロイド外用剤で炎症を制御した結果,ステロイド外用を必要としなくなった.24例では皮膚炎の持続している時期にステロイド外用剤を漸減し中止した.ステロイド外用の離脱の結果,顔面や上半身の皮疹の目立つ症例群では数ケ月の後,紅斑が軽快する例が多かった.3.についてはレーザードップラー血流計を用いて健常人皮膚の各部位とアトピー性皮膚炎の紅斑の皮膚毛細血管血流量を測定し,ステロイド貼付剤の皮膚毛細血管血流量減少作用を観察した.今後はステロイド外用歴やステロイド外用による臨床的効果の症例による差を背景として考慮しステロイド貼付剤の皮膚毛細血管血流量減少作用を比較検討する予定である.
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