角質増殖型の足白癬や中心治癒傾向を欠いた汎発性白癬などの慢性の白癬患者についてトリコフィチンの刺激による末梢血単核球のIFN-γ産生能の測定を行い、慢性の白癬病変におけるサイトカインの関与を検討した。 角質増殖型の足白癬や中心治癒傾向を欠いた汎発性白癬などの慢性の白癬を有する患者の末梢血単核球をトリコフィチンの存在下で72時間培養した培養上清中には、小水疱型の足白癬や中心治癒傾向のある体部、股部白癬などの急性の白癬を有する患者のそれに比べてinterferon-γ (IFN-γ)の活性が低下していた。以上より慢性の白癬患者では遅延型過敏反応に関与する主なサイトカインであるIFN-γの産生が低下していることが判明した。 感染白癬菌の種類、感染部位により生体の防御反応に多少の違いはあるものの小水疱型の足白癬や中心治癒傾向のある体部、股部白癬などの急性の白癬を有する患者においては遅延型過敏反応が生じて白癬菌の排除が行われているものと推定される。一方、角質増殖型の足白癬や中心治癒傾向を欠いた汎発性白癬などの慢性の白癬を有する患者においては何らかの原因により白癬菌成分に対する遅延型過敏反応が低下しており、そのため今回の研究で明らかになったようにIFN-γなどのサイトカイン産生が低下しており、その結果代償的に表皮角化亢進に伴う落屑による菌の排除機構が働いているが白癬菌の排除が効率よく行われないため、慢性の経過をたどっているものと推定される。
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