放射性薬剤体内分布のオートラジオグラフィによる定量評価の検討 骨親和性放射性薬剤の体内分布において、標的病変およびその他の臓器への分布が内部照射の計算に不可欠である。Tc-99m標識化合物などのγ線放出性の放射性核種はシンチレーションカメラあるいはカウンターで画像化もしくは計測ができるが、β線放出性の放射性核種の体内分布の画像化は通常、オートラジオグラフィで行われている。しかし、放射能の定量化は必ずしも容易ではない。 1)今回、ウィスター系ラットで放射性薬剤投与後、麻酔下でドライアイスで冷却したヘキサン(約-70℃)にて凍結した後、ミクロトームを用いて厚さ20μmの凍結切片を作製し、オートラジオグラフィ専用フィルムに密着された。1週間〜2ケ月露光した後、現像してオートラジオグラムを作製した。 2)オートラジオグラムの定量化はオートラジオグラムをイメージスキャナー(Epson GT-8000)でスキャンし、フィルム上の放射能分布の黒化の程度をデジタル変換し、パーソナルコンピュータ(Macintosh Performa 5210)にデータをとり込んだ。ラットの放射性薬剤体内分布の状態をデジタル画像表示するとともに既知標準線源による累積放射能とフィルムの黒化度(ディジタル値)の関係を調べた。 累積放射能と黒化度の間には良好な正の相関が認められた。しかし、累積放射能が高くなるにつれて黒化度が、低値になる傾向があり、注意が必要であった。既知標準線源の作製の仕方によっても若干、黒化度が異なる傾向が認められた。今回の結果から、β線のみ放出する放射性核種ではその体内分布をオートラジオグラムで評価する場合は高放射能度の領域では低放射能度領域に比べて、若干、過小評価する傾向にあることが判明した。βおよびγ線も放出する放射性核種であれば摘出標本およびシンチレーションカメラでγ線を測定でき、その分布をより正確に評価できる可能性がある。
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