研究概要 |
前年度までの^<90>Y,^<111>In,および^<125>Iを用いた実験結果を基礎にして、ヒト大腸癌由来モノクローナル抗体17-1A(以下MoAb 17-1A)の^<186>Re標識化および標識抗体のin vitroでの安定性について検討した.さらにヒト膵臓癌HuP-T4担癌ヌードマウスにおける体内動態についても調べた.標識化の方法として、直接還元法とキレート法を用い比較検討した.直接還元法では、アスコルビン酸で還元したMoAb 17-1Aに、還元した^<186>Reを加えて行った.キレート法ではMAG3を用いて行った.標識抗体の安定性については、生理食塩水(4℃)および血清(37℃)中で検討した.体内動態については、^<186>Re標識抗体(2〜2.5x10^5cpm/80〜100μg/0.2ml生食又はPBS)をHuP-T4担癌動物の尾静脈内に投与後、経時的に主要臓器の湿重量と放射能を測定して調べた.^<186>Reの排泄挙動も調べた.^<186>Re標識抗体の放射化学的収率は直接還元法では88.0%、キレート法では60.9%であった.24時間での標識抗体の安定性は生理食塩水中では85.6%、血清中では58.2%であった.^<186>Reの血中濃度は1時間で3.0%、24時間では0.3%投与用量(ID)/mlであり、血中からの消失は速い傾向を示した.腫瘍内濃度は約1%ID/gを示した.^<186>Reは主に尿中排泄され72時間までに投与放射能の40%から70%が排泄されたが、^<186>Re単独投与時の排泄率より低かった.以上の結果より、標識方法ではキレート法よりも直接還元法が優れていること、期待した以上には腫瘍内への集積率があがらなかったことが判明した.今後はこれら問題点の解決にむけたさらなる検討が必要と思われる.
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