BMIPPはパルミチン酸のアナログで、ヒト心筋細胞内では代謝されにくいと言われていたが、肝臓や心筋細胞内でα酸化を受けることが最近知られている。静注したヨード標識I-123 BMIPPは、主に肝臓、脂肪プール、心臓、筋肉に分布し、主として肝臓と心臓、筋肉で代謝される。I-123 BMIPPを静注し、経時的にシンチカメラにて、心臓部および肝臓部の放射能動態変化を、45分間測定記録し解析し、初期摂取率および全摂取率、消失率を算出した。その後、回転型シンチカメラにて、心臓のSPECTを撮像した。正常人と虚血性心疾患合併のない糖尿病患者において、静注30分後のI-123 BMIPPの心筋への全摂取率および心筋SPECT画像分布上の差を認めなかったが、空腹時の糖尿病患者では、I-123 BMIPP静注5分以内に、心臓、肝臓での初期摂取率が軽度亢進し、また心筋消失率も正常人に比較して、亢進を認めた。空腹時糖尿病患者における血中I-123 BMIPPの放射能は、正常人よりも低下を示した。この傾向は、絶食時間が長くなると、顕著であった。心筋や肝臓のI-123 BMIPPの摂取率や消失率の変化よりも、血中のI-123 BMIPP放射能の方が、著しい差を示し、体の脂肪組織のトリグリセライドプールが大きすぎて、心筋や肝臓など局所における脂肪代謝の差が出にくいように思われる。今後シンチカメラによる心臓、肝臓の体外計測による局所脂肪酸動態解析と共に、血中脂肪酸のHPLCによる解析により、I-123 BMIPPの血中放射能濃度変化や脂肪酸代謝産物を解析する予定である。
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