本研究の目的は3次元表示される画像の臨床的有用性を評価することにある。3次元像はボリュームスキャンが可能なヘリカルCTを用いて得られた。臨床評価に際しては可能な限り標本像と比較した。以下主な検討内容を要約する。 1.肺胸膜の網状構造について 腫瘍等を含む外科的切除肺を空気で膨張させCTを撮像した。この際気道内圧を15〜20cm水中圧に維持した。ヘリカルCTによる肺表面の3次元像にて網状構造が描出された。この網状構造は通常のCT像では胸膜と重なる点状又は線状の高吸収域に相当した。これらは組織学的に(1)肺胸膜と小葉間隔壁の移行部、(2)肺胸膜下リンパ管、(3)肺胸膜下肺静脈に一致した。(1)と(3)はやや粗大な不等辺多角形の紋様を、(2)は微細な網状の紋様を肺表面に形成した。 2.肺線がんに伴う胸膜陥入について 術前のヘリカルCTの3次元像で描出される肺表面のヒダ様集中像の成因について検討した。開胸時の術中所見と比較すると、ヒダ様集中像は胸膜陥入に一致する事が確認された。陥入の中心部にて多くの症例でがんが胸膜に接するのが見られた。一方陥入の遠位部は、切除肺CTで見ると、肺胸膜小葉間隔壁移行部に一致することが分かった。胸膜側肺野で発生したtractionが肺表面に伝達する機構を考察する上で有用な所見であった。 3.その他 術前ヘリカルCTによる3次元像は肋骨病変、縦隔腫瘍、胸腔病変などに有用であった。病変部と隣接臓器の関係が分かり易く描出されていることが術中所見と比較することにより確認できた。
|