前年度に作成した肝癌群は、日本肝癌取扱い規約により、高分化型肝癌部分と中-低分化型肝癌部分に二分した後、前年度と同様にKupffer様細胞数と感光した部分(輝部)面積比を測定することでKupffer様細胞の機能を各群間で比較検討した。 高分化型肝癌部分でもKupffer様細胞が存在したが、その分布はやや疎であり、正常肝組織よりその細胞数、輝部面積比が有意に少なかった。高分化型肝癌部分と肝過形成部分との比較では、Kupffer細胞数は有意差はないものの、輝部面積比では、高分化型肝癌群が有意に少なかった。 中-低分化型肝癌部分では、Kupffer様細胞が存在したが、その分布はさらに疎であり、その細胞数、輝部面積比とも正常部分、肝過形成部分、高分化型肝癌部分より有意に少なかった。しかし、中-低分化型肝癌の部分でも、正常の疑似ミクロオートラジオグラフィに比して、輝部面積比は有意に高かった。 本研究により、従来、放射線同位元素を標識したコロイドによる肝シンチグラフィーで欠損を示し、網内系細胞が欠如していると考えられた肝癌部分でも網内系細胞が機能していることが証明された。腫瘍内の網内系細胞機能を反映した鉄コロイド併用MRIは、肝細胞癌と肝過形成病変の鑑別や肝細胞癌の分化度診断に有用な手がかりとなることが証明された。
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