ラットを0.06% 3'-methydiaminobenzine tetrahydro-chloride(DAB)を混和した餌を三ヶ月連続投与して得られた肝癌群、0.025% Acetylaminofluorene(AAF)を混和した餌を四ヶ月断続投与により得られた肝過形成結節群、普通の餌を投与した正常群の三群に分けた。 各群に対して、^<59>Feを認識したコンドロイチン硫酸鉄コロイド(CSIC)を投与し、ミクロオートラジオグラフィを行った。尚、肝癌群は、日本肝癌取扱い規約により、高分化型群と中-低分化群に二分した。ミクロオートラジオグラフィの暗視野像を画像処理システムに取り込み、感光した部分(輝部)の面積を1視野当たりの総面積で割り、輝部面積比を算出することにより定量化した。また、各群のKupffer細胞数も測定した。 正常組織と肝過形成の部分は、Kupffer細胞数、輝部面積比とも、有意差は認められなかった。高分化型肝癌部分でもKupffer細胞が存在したが、その分布はやや疎であり、正常肝組織よりその細胞数、輝部面積比が有意に少なかった。高分化型肝癌部分と肝過形成部分との比較では、Kupffer細胞数は有意差はないものの、輝部面積比では、高分化型肝癌群が有意に少なかった。中-低分化型肝癌部分でも、Kupffer細胞が存在したが、その分布はさらに疎であり、その細胞数、輝部面積比とも正常部分、肝過形成部分、高分化型肝癌部分より有意に少なかった。 本研究により、従来、放射線同位元素を標識したコロイドによる肝シンチグラフィーで欠損を示し、網内系細胞が欠如していると考えられた肝癌部分でも網内系細胞が機能していることが証明された。腫瘍内の網内系細胞機能を反映した鉄コロイド併用MRIは、肝細胞癌と肝過形成病変の鑑別や肝細胞癌の分化度診断に有用な手がかりとなる。
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