研究概要 |
腫瘍内における5FU誘導体の代謝中間物質の比率をF-MRSを用いて経時的に定量し、5FUの上述のふたつの作用点における、ウラシルとの競合作用について解析した。DNAの生合成の抑制とRNAの生合成の抑制作用に差異はあるのかを解析した。DNAの生合成に不可欠なdUMPに拮抗する5FUの代謝産物であるFdUMPと、RNA合成に不可欠なUTPに直接拮抗するFUTPの動態定量を、F-MRSを用いて経時的かつ非侵襲的に測定した。ウラシルの併用による増強効果について、DNAとRNA代謝のどちらに作用しているのか、についてはウラシルの併用比に依存する様式が、二相性か一相性なのかを解析を試みた。 【実験方法】 1.使用薬剤の及び5-FU代謝産物のケミカルシフトの確定。 HCFU(1-Hexylcarbamoyl-5-fluorouracil) 5'-DFUR(5'-deoxy-5-fluorouracil)について、F-MRSのケミカルシフトが確定していないため、in vitroでのF-MRSを作製してシフト値を確定する。 2.HCFU、5'-DFURと5-FUの定量のための検量線の作製 各薬剤を生理食塩水中に溶解し、モル数を1.0M、0.5M、0.1Mと3点設定して、MRSのピークの測定値をもって検量線を作成した。 3.FdUMPとFUTPのケミカルシフトの確定 FdUMPとFUTPケミカルシフトについては、文献的にはともに、5-FUから+4.9ppm(5.6T、226.79MHz、90°rfパルス、40KHz掃引周波数)3)となっているが、掃引周波数を小さくしフリップアングルを調整することによって、より分離度の高いスペクトルを得られ、FdUMPとFUTPのケミカルシフトが分離でき、定量が可能となる。しかしながらともに、生体代謝産物であるため、精製分離はほぼ不可能であり、マウスに移植した腫瘍内DNAとRNAに結合したフッ素をそれぞれ分離定量して、それぞれFdUMPとFUTPと反映させた。MRSのピークとの相関図を求め検量線とした。(N=10) 【結果】 19F-MRSを測定するには,高磁場6.7のMR装置が必要で,5-FU及びその分解,誘導物,FdUMP等の同定の為のシミング(調整)に時間を要し,また,マシンタイムがなく,今年度は検量線の作成だけで終了した。
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