放射線治療を目的に受診した子宮頸癌25例に対して初診時、10Gy、20Gy、30Gyの各照射時にBiopsyを行った。検体は、直ちに無菌のエッペンチューブに入れて-80^0Cに保存した。検体からRNAを調整し、RT-PCR法によってcDNAを増幅し、p53遺伝子の発現の有無を調べた。制限酵素処理したcDNAをアガロース電気泳動で分離し変性して、p53のプローブに相補的な配列をもったバンドを検出し、UV照射を行った。p53mRNAの発現を認めた症例に対して、このp53遺伝子が野生型か、変異型かを決定するために、PCRで得られたDNA断片をプラスミドベクターに挿入し、大腸菌に導入して、プラスミドDNAを精製して、タ-ミネータ法によって塩基配列を決定した。放射線治療によってCR(complete response)を得られた3症例には野生型p53遺伝子が発現し、PR(partial response)であった2症例にはp53遺伝子の発現は認められなかった。 さらに初診時、各照射時にBiopsyを行った検体に対して同時にホルマリン固定も行い、パラフィン包埋切片にし、腫瘍におけるアポトーシスの発現の有無を検討するためにApopTag染色(ONCOR社)を行った。CRであった症例の初診時、10Gy、20Gy、30Gyの各時点におけるApopTag染色陽性率は25%、90.9%、66.7%、33.3%であった。それに対してPRであった症例の陽性率は63.6%、14.3%、30%、27.3%であった。以上の結果から子宮頸癌の放射線治療による照射効果には、特に10Gy照射時点における、野生型p53遺伝子を介するアポトーシスの関与が示唆された。今後アポトーシスの発現に関与するp21、bcl-2、baxも検討する予定である。
|