研究課題
一般研究(C)
非ホジキンリンパ腫で頭頸部領域に放射線治療を行った患者11例について味覚の障害と唾液腺の障害を放射線治療の線量を考慮しながら、経時的な変化をprospectiveに観察した。唾液腺障害については主に食物摂取、日常会話、睡眠がどの程度障害されているか自覚障害をスコア化し評価した。この点については研究は順調にすすんでおり、自覚障害は放射線の線量だけでなく、照射野の大きさや患者の年齢の因子が大きいことが分かってきた。このような患者にピロカルピンや漢方薬の投与による障害の軽減に対しても研究を開始した。一方、味覚についてはテ-ストディスクと電気味覚計を購入し、障害の程度の測定を開始した。現在までのところ甘さが特に放射線に対して敏感な傾向がある。また、知覚過敏がおこり、辛子やわさびに対し、特に敏感な患者も多い。しかしながら、非ホジキンリンパ腫だけでは患者が少なく、また放射線の線量も他の悪性腫瘍に比べると少なく、研究期間中に十分なデータが集まらず、研究が不十分になる恐れもあり、非ホジキンリンパ腫以外の頭頸部悪性腫瘍で唾液腺や舌が照射野に含まれる患者にも同様の研究を行うことによって非ホジキンリンパ腫患者の特徴と対策も明らかに出来ると考えられる。そこでこのような非ホジキンリンパ腫以外の患者37名も研究対象に加え、同様に唾液腺障害や味覚障害について調査中であり、その障害の軽減の研究についても同様に行う。一方、放射線による唾液腺障害を軽減するために耳下腺の移動を行うという外科的処理の基礎的研究は大きな壁にぶつかっている。それは、唾液腺が浅葉と深葉に分かれており、その間に顔面神経があることである。外科的に耳下腺を無理に移動させると、顔面神経麻痺がおこり、臨床的には唾液腺障害以上の問題なる可能性があり、現在慎重に対応を検討中である。