研究概要 |
子宮癌などのため放射線治療を受けた人々では,大腸癌が増加することが知られている.そこで,当施設に保存されている3000例の大腸癌切除例から,放射線照射の既往歴のあるものを選び出し,(1)発癌および放射線大腸炎を指標とする線量効果関係の解明,(2)照射後の大腸癌と一般の大腸癌とにおけるがん遺伝子,がん抑制遺伝子変異の変異を比較する研究を行い,現時点までに以下の結果を得た. 1.症例の登録 骨盤照射の既往のある大腸癌症例の登録を,1995年まで延長して,総計32例を登録した. 2.放射線照射データの再収集 登録した32例のうち,当施設での照射例(23例)全例,他の施設で照射された9症例のうち2例,計25例のデータを収集した. 3.組織型の解析 32例の組織型は,超高分化腺癌3例,高/中分化腺癌20例,低分化腺癌0例,粘液癌8例,扁平上皮癌1例であり,粘液癌が比較的多いという傾向が確かめられた. 4.線量との関係 線量計算はまだ進行中で,これまでのところ,放射線大腸炎,大腸癌の組織型ともに,線量との有意な関係は認めていない.今度,放射線大腸炎の程度を2〜3段階に細分化して検討する. 5.遺伝子解析 パラフィンブロックを用いた検討は,p53,rasに関しては,いくつかの例について結果がでたが,いずれも再現性に乏しく,現時点で有意な結果を得ていない.新鮮材料では,これまで3例について,ras遺伝子の変異を検討したが,いずれも粘液癌でなかったせいか,突然変異を検出できなかった.今度は,粘液癌の新鮮材料を用いて検討する予定である.
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