研究概要 |
平成7年度研究実績:脳内中枢型ベンゾジアゼピン(BZD)受容体は感情障害や不安障害に有効とされるBZD系薬物(抗不安薬)が結合する部位であり,これらの精神疾患に特徴的な不安症状との関連が深い。そこで感情障害および不安障害患者を対象に1231-lomazenil SPECTによるBZD受容体結合の非侵襲的検索を施行した。その結果,BZD系薬物を未服薬の患者群では,前頭上部,頭頂,側頭,後頭皮質で受容体結合の有意な低下が認められた。また左前頭皮質上部および右側頭皮質においては,不安症状の重症度と受容体結合強度との間に有意な負の相関がみられた。このBZD受容体機能の変化は,上記疾患における不安症状と関連した病態を反映するものと考えられた。 平成8年度研究実績:既に本研究者らは胎生期にストレス負荷を加えたラットが成熟後明らかなストレス脆弱性を示すことを確認し,これがヒトでの感情障害や不安障害のモデル動物となる可能性があることを立証している。前年度の臨床研究の結果の機序を解明するため,(1)通常ラットで,不安惹起物質として脳内にも存在するβ-CCBを投与した場合のBZD受容体結合の変化を1251-lomazenilによるオートラジオグラフィーによって検討した。(2)また胎生期ストレス負荷ラットに急性拘束ストレスを負荷した場合についても同様に検討した。その結果は予備的なものであるが,(1)β-CCB投与によってBZD受容体が占拠されると共に受容体のリガンド結合親和性も低下する傾向が認められ,(2)胎生期ストレス負荷ラットでは急性ストレス負荷によって右前頭皮質の受容体結合が相対的に増加する傾向が認められた。すなわち不安惹起物質あるいはストレス負荷は脳内BZD受容体機能の変化をもたらすことが示されたが,臨床研究でみられた同受容体結合の変化とは必ずしも平行関係にあるとはいえず,さらなる検討が必要である。
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