1.グリア系の細胞にみられる骨格異常は、ガリアス・ブラーク染色に基づいて(1)tuft-shaped astrocytes(TuSAs)、(2)glial coiled bodies(GCBs)、(3)argyrophilic threads(ATs)の3種に分類されたが、進行性核上麻痺(PSP)ではこのいずれもが大脳半球、小脳、脳幹に多数観察された。皮質基底核変性症(CBD)5剖検例の検討から、TuSAsは大脳にはみられず、astrocytic plaques(AQs)が大脳皮質を中心に灰白質に散見された。GCBs、ATsについては、PSPと同様に大脳に広汎に分布していた。免疫組織学的には、抗タウ蛋白染色、抗paired helical filament染色ではその性状には特に相違を認めなかった。AQs、GCBs、ATsの分布は基本的には神経変性と並行していた。大脳皮質、大脳白質、視床、大脳基底核、脳幹、小脳にみる変性の軽重の異同はCBDでは多彩であり、その疾患のもつ多様性が指摘された。さらに、ピック病5例では、GCBs、ATsが大脳皮質、白質に極めて少量出現する例はみられたが、その疾患における意義は極めて少ないと判断された。 2.PSPとCBDは、グリア系の細胞に骨格異常を呈する代表的な疾患であるが、臨床的にはパーキンソン症状、頸部ジストニア、眼球運動障害、仮性球麻痺など神経症候に類似する点が多かった。失語症などの皮質症状が前景にみられる例がCBDにはみられたが、2疾患の臨床的な鑑別にも困難性が指摘された。 グリア細胞の骨格異常では、PSPの定型的な臨床経過を呈しながら TuSAs、AQsがみられない症例が1例あり、移行例とかCBD例として判断すべきなのか、現状では病理診断の難しい例であった。結論的には、TuSAsとAQsが病理学的には大まかな指標に挙げられるが、それのみで病理学的に鑑別できるものではないと考えられた。
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