ナルコレプシ-は日中の耐え難い眠気、抗重筋の脱力発作などを主症状とする比較的まれな傾眠疾患である。我々は、睡眠障害国際分類の診断基準を満たすナルコレプシ-患者10名と、年齢・性を一致させた健常被験者10名を対象に、^<15>O-H_2Oを用いたPETスキャンを行ない、脳血流測定を行なった。 1)安静時脳血流の測定 閉眼、安静覚醒時の脳血流の比較では患者群で視床血流量の増加が認められた。皮質各領域、基底核領域の血流量には有意差を認めなかった。視床は脳幹部網様体賦活系からの上向性の投射の中継核として働いており、同部位の異常は患者群で覚醒の神経回路に何らかの異常が存在することを示唆しているものと思われる。15EA04:2)睡眠時脳血流の測定 患者群でPETスキャン中に入眠したもの(6例)を対象に、睡眠の各段階ごとの脳血流測定を行なった。安静覚醒時と軽睡眠期(ステージ1-2)の全脳血流量の比較では、軽睡眠期において血流の低下傾向を認めた。深睡眠期(ステージ3-4)では安静覚醒時に比べ20%超の全脳血流低下が見られた。ナルコレプシ-の睡眠時脳血流に関しては、軽睡眠期で逆説的に上昇するという報告がこれまでに一件報告されているのみであったが、我々の結果はこれに反してナルコレプシ-でも入眠後は通常の睡眠過程を経ていることを示している。睡眠時脳血流の研究に関しては、現在の症例数では不十分で、今後も症例数を増やして更に検討を加えていく必要があるものと思われる。
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