研究課題/領域番号 |
07671056
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山上 皓 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60107315)
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研究分担者 |
加藤 久雄 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (90051713)
岡田 幸之 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (40282769)
小西 聖子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (30251557)
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キーワード | 触法精神障害者 / 追跡調査 / 再犯 / 再犯予測因子 / 前科 / 退院制度 / 保護観察 / 処遇施設 |
研究概要 |
本年は、我が国の触法精神障害者処遇の改善策を探る目的で、下記の二つの調査を行った。一つは、触法精神障害者の追跡調査で、再犯として殺人等凶悪犯罪を犯した事例の犯行に至る経緯を詳しく調査、分析し、我が国の触法精神障害者処遇の問題点について検討を加えた。もう一つは、触法精神障害者処遇にかかわる我が国の法制度、処遇施設についての、欧米諸国、特にイギリスのそれとの比較検討で、我が国の対策の欠陥を明らかにするものとなった。 再犯事例の分析では、再犯予測因子として、「過去10年間の前科前歴回数」が再犯と相関を示しており、このほか、薬物乱用、暴力団との関連なども再犯の要因として重要と思われる。指標犯行(1980年の犯行)後の処遇別に再犯率をみると、医療を受けた事例が18%、医療を受けなかった事例が37%で、事件後の医療の重要性が分かるが、中毒性精神障害者だけは、医療を受けた事例の再犯率(41.6%)の方が、医療を受けなかった事例のそれ(28.4%)より高く、治療効果が望めない現状にあることが分かる。 再犯事例では、無職者や、住居不定者、単身者が多く、犯行時に精神科治療を受けていなかった者が大多数である。不安定な生活状況、および医療を受けていない状態で再犯に及んでいることが判明した。また、追跡期間中に、殺人等凶悪犯罪を行った事例の分析で、精神障害者による凶悪犯罪には、医療によって比較的容易に再犯が防ぎうる事例と、それがきわめて困難と思われるような事例があることを明らかになった。 これらの触法精神障害の再犯事例の諸特徴、およびわが国の法制度、処遇施設の欠陥について検討し、触法精神障害者のための専門処遇施設の必要性、一部の危険な患者の退院制度を可能とし、退院患者の治療継続を促す保護観察を可能とするような、法及び制度の改革の必要性を明らかにした。
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