研究概要 |
短期(30分、3時間、1日、2日)および長期(6日、12日)の強制歩行ストレスを負荷したラット、さらに長期(14日)の強制歩行ストレス後2週間無動状態の続く"うつ病モデルラット"と自然に自発活動の回復してくる"自然回復ラット"を作成し、ストレス負荷を行わない対照群との間に、青斑核細胞のチロシン水酸化酵素(TH)mRNA発現量に差がないか、in situ hybridization法および画像解析法を駆使して検討した。その結果、30分と3時間ストレス負荷群のTHmRNA発現量(光学密度値)には、対照群と比べて有意差がなかったが、l日と2日のストレス負荷群の発現量は有意に増加していた。6日と12日のストレス負荷群では、両者とも対照群より有意に高値を示していた。うつ病モデル群のTHmRNA発現量は、対照群と比べて有意な増加を示していたが、自然回復群の発現量は対照群と差がなかった。以上により、強制歩行ストレスは、拘束ストレス(Smith et al.,Brain Res.,1991)と比べて、THmRNA発現の増加に時間がかかり、増加した状態が持続することから、マイルドでも慣れを生じさせないタイプのストレスであるということができる.このようなストレスを負荷して作成したうつ病モデル動物では、ストレス終了後2週間経過しても、なおTHmRNA発現が増加しており、ノルアドレナリンの合成機能は亢進した状態が続いていると解釈される。なお、今回、同時に青斑核のTH免疫反応性も免疫組織化学法により測定する予定であったが、同時測定法の開発に手間取り、また、うつ病モデルラットに対する抗うつ薬慢性投与の影響についても検討する予定であったが、結果を得るまでに1-2ヶ月の猶予を要する。
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