我々は、リン磁気共鳴スペクトロスコピー画像法(^<31>P-1DCSI)を用いて、双極性障害の脳代謝について検討を行った。その結果、双極性障害患者の左前頭葉でクレアチンリン酸が低下しており、これが抑うつ症状と関連していることを見いだした。更にこの結果を確認するため、プロトン磁気共鳴スペクトロスコピー法(^1H-MRS)により調べたところ、うつ状態において左前頭葉のクレアチンが低下していることを確認した。この所見は、単極性うつ病や精神分裂病、パニック障害など、他の疾患では見られなかった。更に、これらが素因依存的な脳エネルギー代謝障害に起因するものである可能性を検討するため、光刺激^<31>P-MRSを開発し、双極性障害患者に応用したところ、双極性障害患者においては、正常者と異なった反応パターンが見られたことから、やはり脳エネルギー代謝障害が存在すると考えられた。また、断眠療法が双極性うつ病に特異的に奏効することから、断眠療法の作用機序を明らかにするため、断眠前後における脳エネルギー代謝の変化を正常被験者において調べ、断眠に対する脳エネルギー代謝反応には個人差が存在することを明らかにした。
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