研究概要 |
現在、精神科臨床においては、複数の抗うつ薬に抵抗してうつ状態が持続するいわゆる難治性うつ病者が存在し、難治性うつ病者ではしばしばうつ病の急性期にみられるような高コルチゾール(COR)血症が持続的に観察されることがある。しかしながら現段階において、1)高COR血症が治療的に除去された場合、どのような臨床的変化が観察されるのか、あるいは、2)この高COR血症がどのようなメカニズムによって出現するのか、は明らかになってはいない。そこで本年は、1)について知るために、昨年度に引き続いてCOR合成阻害薬のmetyraponeを、数人の難治性うつ病者に対して追加使用した。また2)を検討するために、多数の難治性うつ病者に対してcorticotropin-releasing hormone(CRH)を負荷し、得られたadrenocorticotropic hormone(ACTH)やCOR反応を測定し、他の対照者との間で比較検討した。 本年度実績としては、metyraponeをさらに6例の難治性うつ病者に使用し、その結果、本薬剤の使用例は合計9名(平成7年度にすでに実数3名、延べ3回を終了、平成7年、8年両年度に行ったmetyrapone療法の延べ回数は、症例によって複数回の施行例があるため16回)となった。 さらに平成8年度において、CRH負荷試験を施行した対象者は、難治性うつ病者n=11,非難治性うつ病者n=4,健常者n=7,寛解うつ病者n=15,および未治療うつ病者n=14、合計51名となった。ただし当初目的としていたmetyrapone療法施行前後におけるCRH負荷試験の施行は、治療後の検査施行時点をどこにとるかといった技法的問題が明らかとなり、結果的にわずか1名に対して施行したに止まった。 以上の結果は別に研究成果報告書概要にまとめた。
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