499名の対象者(神奈川地区・群馬地区・高知地区合計)で5年間の前向き経過と転帰を分析した。経過・転帰判明者は399名であった(判明率80%)。各地区で症状評価などの訓練を経た研究者がデータ見直しを行った結果、3地区の間で発病様式・発病契機の有無・病型などに違いはなかったが、経済状態・教育歴などの社会経済的条件で高知県が他地区に比べてやや劣っていた。経過を6型に分類したところ、もっとも経過のよい方からI型15%、II型22%、III型33%、IV型18%、V型9%、VI型3%であった。5年間の精神症状の変動は、少ないもの70%、中間21%、大きいもの10%であった。一方社会適応レベルの変動では、少ないもの45%、中間21%、大きいもの34%であり、精神症状に比べてより大きな変動が見られた。経過型の分布での地域差はなかった。再発回数、入院回数、入院機間は神奈川地区が他の2地区に比べて少なく、入院回数は高知地区が多く、入院機間は群馬地区で長かった。予後予測因子の中では、性別・発病年齢・初診年齢・自殺企図・身体合併症・病型・経済状態・家族関係・友人関係・親子関係・就労状況・婚姻状況が経過と有意に関係していた。今回の所見は、従来の予後研究の結果に比べて分裂病の予後は予想以上によいことを示している。また地域によって治療状況が大きく異なることも示している。さらに従来から指摘されていた予後規定因子の多くが今回の研究でも確認された。今後は結果のより詳細な分析を行う予定である。さらに10年転帰の調査を準備中である。
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