平成2年11月、普賢岳が約200年ぶりに噴火した。避難住民の精神保健対策を実施しながら、平成3年11月(避難生活開始6ヶ月後:第1回調査)、平成4年6月(同 12ヶ月後:第2回調査)、平成5年6月(同 24ヶ月後:第3回調査)の3回にわたって精神的健康調査を行った。 次のような結果を得た。(1)GHQ平均得点は、第1回調査から第2回調査、および第1回調査から第3回調査にかけては有意に低下していたが、第2回調査と第3回調査の間には変動を認めなかった。(2)GHQ8点以上の高得点者率は、先のGHQ平均得点と同じ推移をたどっていた。(3)因子分析によると、「不安・緊張・不眠」因子は有意に改善していたが、「抑うつ」因子は改善せず、仮設住宅団地における対人関係を示す「対人関係困難感」因子は悪化していた。(4)避難生活の時間経過と共に、若年者に比較して、中高齢女性のGHQ平均得点は有意に上昇していくことが明らかになった。しかし、男性にはその傾向を認めなかった。つまり、災害時間の長期化とともに、女性の精神医学的問題惹起の危険性が高くなっていくことが伺えた。「仮設住宅への避難」、「身体的問題で通院」、警戒区域設定で生活の基盤を奪われた「自営業者」などの背景要因をみると、女性ではそれらの要因が次第にリスク化していくことが明らかになった。そして、リスク要因は加重されていくことも確認された。しかし、男性にはそのような傾向は存在しなかった。復興過程の災害ストレスは、女性に負荷が大きいと考えられる。
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