研究概要 |
平成7年度の研究では、ddyマウスPTZ誘発痙攣の発作時において、大脳皮質で痙攣後10分の細胞質画分のPKC活性が対照、痙攣前駆期、強直痙攣期に比べ有意に亢進し、PTZ誘発痙攣時、大脳皮質においてPKC-βおよびPKC-αの細胞膜から細胞質へのtranslocationが生じることが見出された。 今回は、PKC活性の経時的変化を検討し、また、atypical, navelPKCについてもWestern blotting法を用いて検討を加えた。さらに、PKCの調節酵素の一つであるCalpain活性についても検討を加えた。 結果 1) PKC活性におよぼすPTZ誘発痙攣の影響 大脳皮質で痙攣後10分の細胞質画分のPKC活性が対照、痙攣前駆期、強直痙攣期に比べ有意に亢進していた。亢進したPKC活性は痙攣後90分で対照のレベルに復した。膜画分では有意な差は認められなかった。海馬、線条体、視床・視床下部の3部位では細胞質、膜画分とも有意なPKC活性の変化がみられなかった。 2) PKC isozymeのPTZ誘発痙攣の影響(Western blotting) 痙攣後10分で細胞質画分の80K PKC-βが増加し、膜画分では減少していた。これらの変化は痙攣後90分で対照のレベルに復した。また、細胞質画分で強直痙攣期および痙攣後10分で50K PKC-βが出現していた。PKC-αでも同様な傾向が見られたが、PKC-γでは痙攣による変化がみられなかった。またatypical, novel PKCであるPKCδ,ε,ζについても変化は見られなかった。 3) Calpain活性におよぼすPYZ誘発痙攣の影響 大脳皮質の細胞質画分および膜画分のCalpain活性は対照に比べ、痙攣前駆期、強直痙攣期、痙攣後10, 30, 90分で有意な差は認められなかった。 考察 PTZ誘発痙攣時、大脳皮質においてPKC isozymeのうちPKC-βおよびPKC-αの細胞膜から細胞質へのtranslocationが生じ、細胞質のPKC活性が増加した。また強直痙攣期に細胞質で50KのPKC免疫活性が観察された。これらの変化は痙攣後の変化のうち比較的早期の変化と考えられた。また、この50KのPKC免疫活性はCalpainによるPKCの限定分解によるものと別の機序で産生されたと考えられた。
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