平成9年度の研究では自然発症てんかんモデルであるELマウスを用いて、発作におけるPKC isozymeの発現の変化をnorthern blot、RT-PCR(reverse transcriptase-polymerase chain reaction)などによって検討した。 結果 1)発作間欠期、発作後10分、30分、60分、120分の脳より調製したtotal RNAをnorthern blotし、エンドラベリングによって[^<32>P]-dATPで標識した各PKC isozymeに特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。しかし、諸条件でハイブリダイゼーションを試みたが、非特異的なバンドがみられたり、バンドが出現しなかったりで、安定した結果を得られなかった。 2)そのためRT-PCRにより、各PKC isozymeの発作後の変化を調べた。PKC αは発現量は少なく、発作間欠期より徐々に低下していった。PKC βも発現量は少なかったが、間欠期より徐々に上昇していった。PKCγは豊富に発現しており、発作30分後にピークとなり、120分後に間欠期のレベルに戻った。PKC δは発現量は少なかったが、発作30分後にピークを示した。 考察 RT-PCRによるELマウス発作後の脳における各PKC isozymeは、前年のPTZ痙攣後のwestern blotによる結果とは異なる発現パターンを示した。このことは、PT-PCRの定量性の問題や転写、翻訳レベルで異なった調節を受けている可能性などが考えられる。今後、今回得られたPCR産物をサブクローニングし、cRNAプローブを作成し、northern blotやin situ hybridizationによって発現量、発現部位の検討をする。また、western blotによる検討も加える。さらに発育過程におけるPKC isozymeの変化についても検討したい。
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