アルコール症の認知障害の神経心理学的研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07671086
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 鹿島 晴雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (70101954)
• 研究分担者: 吉益 晴夫 慶應義塾大学, 医学部・精神神経科学教室, 助手 (60240347) ; 斉藤 寿昭 慶應義塾大学, 医学部・精神神経科学教室, 助手 (60186947) ; 大江 康雄 慶應義塾大学, 医学部・精神神経科学教室, 助手 (30185201)
• キーワード: Alcoholism / frontal function / memory disorder

研究概要

平成7年度は国立久里浜病院アルコール病棟他に入院中のアルコール症者で、コルサコフ症候群またはいわゆるアルコール性痴呆を示さず、頭部CTscanにおいても局在病変、びまん性脳萎縮の認められない23例と、健常対照20例に記憶検査、前頭葉機能検査を含む種々の神経心理学的検査を施行した。年齢、教育歴を共変量とした分散分析の結果は以下の通りであった。MMS : 27.2・27.8(アルコール症・健常対照)、7語記銘初回再生数:5.3・5.9、7語記銘平均再生数:6.3・6.9、7語記銘遅延再生数:5.1・6・4*、7語記銘遅延再認数:12.8・15.1*、Rey-Osterrieth complex figure test (ROCFT)模写:33.2・35.8、ROCFT再生:18.5・24.9*、ROCFT絵画配列:0.7・0.9、系列絵:0.7・0.9、迷路検査:8.6・18.8**(*p<0.05,**p<0.01)で、アルコール症者において、語系列記銘検査(7語記銘検査)の遅延再生と再認、Rey-Osterrieth complex figure testの再生、迷路検査での有意な成績の低下が認められた。これらの結果は、明らかな臨床的症状のないアルコール症者における、言語性および非言語性の記憶障害と問題解決能力の障害(前頭葉機能障害か)の存在を示唆するものである。
また、飲酒期間(週間飲酒期間が24年未満の短期飲酒群と24年以上の長期飲酒群)と乱用期間(13年未満の短期乱用群と13年以上の長期乱用群)が長いほど、記憶障害と問題解決能力の障害がより強い傾向もうががわれた。

研究成果

• [文献書誌] 鹿島晴雄: "注意障害と前頭葉損傷" リハビリテーション医学. 32. 294-297 (1995)
• [文献書誌] 鹿島晴雄: "前頭葉症状と神経心理学的評価" 脳と精神の医学. 6. 145-154 (1995)
• [文献書誌] 鹿島晴雄他: "アルコール痴呆-神経心理学的類型について-" 日本アルコール精神医学雑誌. 2. 47-56 (1995)
• [文献書誌] 鹿島晴雄他: "高次脳機能障害のリハビリテーションにおける“機能系の再編成"" Journal of Clinical Rehabilitation. 別冊. 14-19 (1995)
• [文献書誌] 鹿島晴雄他: "前頭連合野と文脈記憶" Brain Medical. 7. 251-258 (1995)
• [文献書誌] 三村將,鹿島晴雄他: "前交通動脈瘤破裂後健忘症候群とアルコールコルサコフ症候群の神経心理学的検討" 臨床神経学. 35. 850-854 (1995)
• [文献書誌] Haruo Kashima et al.: "Frontal lobe and memory disorder (Chapter), Excerpta Medica" Elsevier, The Netherlands (in print), (1996)
• [文献書誌] Haruo Kashima et al.: "Frontal lobe symptoms and neuropsychological assessment (Chapter)書名(The association cortices-Stracture and Fictions)" Gordon and Breach Science Publishors Inc, (in print), (1996)