研究課題/領域番号 |
07671086
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
鹿島 晴雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (70101954)
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研究分担者 |
吉野 文浩 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00220707)
大江 康雄 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30185201)
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キーワード | アルコール痴呆 / コルサコフ症候群 / 前頭葉機能障害 / 神経心理学的検査 / アルコール症 / 記憶障害 / 問題解決能力 |
研究概要 |
臨床的に明らかな脳損傷を認められないアルコール症95例を対象として、断酒後8〜10週後に,前頭葉機能検査を含む神経心理学的検査を施行した。健常群40例との比較、検討の結果、アルコール症において、言語性および非言語の記憶障害、特に干渉後の再生障害、と問題解決能力の障害が認められた。またそれらの障害と飲酒歴の関係を検討するために、アルコール症群を短期習慣飲酒群と長期習慣飲酒群、短期乱用群と長期乱用群の4群に分けその神経心理学的障害を比較した結果、長期飲酒群および長期乱用群において有意な記憶課題の成績低下が認められた。このことから、アルコールの大量の長期摂取は、記憶障害を中心とする認知機能低下を生じることが示唆された。 また本年度は、アルコール症による重度の認知障害である“アルコール痴呆"の神経心理学的特徴(類型)も検討した。断酒後3ケ月以上経過し、Mini-Mental State Examinationが23点以下、ないし臨床的に“ぼけ"と認められたアルコール症39例を対象とし、知的機能、記憶、前頭葉機能、構成機能に関する種々の神経心理学検査を施行した。検査結果のパターンから定型コルサコフ症候群型、重症コルサコフ症候群型、前頭葉機能障害型、全般性脳機能障害型、4型を区別しえた。重症コルサコフ症候群型、全般性脳機能障害型がいわゆる狭義のアルコール痴呆に相当するものと考えられた。“アルコール痴呆"に関しては議論のあるところではあるが、少なくとも臨床的には痴呆といいうる状態は存在する。またそれらは前頭葉機能障害ないし軸性健忘型の記憶障害を示し、狭義の“アルコール痴呆"を含めアルコール症の慢性期の認知障害はよりanterior dementiaないし皮質下性痴呆に関連が深いと考えられた。
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