平成7年度の研究において、ヒト神経芽細胞腫SY-5Y細胞に発現しているD_3DA受容体mRNAに由来するRT-PCR産物の他に、約100-bp分子量の小さいRT-PCR断片を得た。この分子量の小さな断片は、既報のヒトD_3DA受容体cDNAの構造と比較すると98-ntの欠失を伴っていた。この欠失D_3DAは実際にタンパク質に翻訳されているものと推定されるが、DA受容体としてのリガンド結合能を有しておらず、その機能は明らかにすることができなかった。ヒトD_3DA受容体mRNAは約8kbであり、その構造を明らかにするには、転写開始点近傍の領域までを含むcDNAが必要であるため、D_3DA受容体を多量に発現しているヒト黒質のポリ(A)^+RNAを基質にRT-PCRを行い、部分cDNAライブラリーを作成、ヒトD_3DA受容体全翻訳領域に相当するcDNA断片をプローブにスクリーニングを試みたが、十分な長さの5'非翻訳領域を含むcDNAクローンは得られなかった。ヒト末梢血白血球より抽出したゲノミックDNAを5種の制限酵素で切断後、アンカーオリゴヌクレオチドを接続、ヒトD_3DA受容体遺伝子翻訳開始点付近の配列を基に作製した2種のプライマーとアンカーオリゴヌクレオチドに対するプライマーを用いたlong PCR法に準じた方法により、ヒトD_3DA受容体遺伝子5'非翻訳領域を増幅することを試みたが、解析に十分な長さの5'非翻訳領域断片を得ることができなかった。Long PCR反応条件の最適化を試みたが、おそらく5'非翻訳領域のGC含有量が多いためか、十分な長さの断片は得られなかった。そこで、ヒトD_3DA受容体全翻訳領域に相当するcDNA断片をプローブに用い、ヒロ胎盤ゲノムDNAライブラリーから、ヒトD_3DA受容体遺伝子5'非翻訳領域を含むファージクローンを得、現在その構造を解析中である。
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