研究概要 |
最近、老年者や救命救急センターの入院患者の増加のため総合病院において、せん妄患者が増加している。せん妄は原疾患の治療を妨げ、合併症を起こすことがありせん妄に対する対策は重要である。ところで、せん妄の治療にはこれまでハロペリドール,チアプリドなどの抗精神病薬が主に用いられてきたが、十分に効果をあげていないのが現状である。今回はまず、四環系抗うつ薬の一つであるミアンセリンに抗せん妄効果があることを示し、同時にせん妄の病態を経時的に検討することを目的に、第1年度には、せん妄発症後、1、3、5日目に採血して、ミアンセリンの血中濃度、血漿MHPG,HVAを測定した。更に、第2年度には術前より、せん妄発症の有無にかかわらずアクチグラフを装着して、活動量および血漿MHPG,HVAの変化を計測した。その結果、ミアンセリンには抗せん妄効果があり、また、その血中濃度が投与1日目から上昇していたことから抗うつ効果とは異なった作用機序で作用していることが明らかになった。更に、術後せん妄の患者でミアンセリンの経口投与ができない患者にはミアンセリン坐薬を作成し投与したところせん妄出現時、血漿MHPGが上昇していたことから、せん妄出現時にはノルアドレナリンの代謝が亢進していることが推定された。なお、採血に際しては患者及び家族の同意を得て行った。
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