研究概要 |
老年性痴呆疾患における夜間異常行動や昼夜逆転の睡眠などは、看護の大きな問題となっている。また、老年者の25%以上が何らかの睡眠障害により日中の眠気を訴え、生活に支障をきたしている。日中の眠気の増大は脳の正常な活動を低下させ、痴呆老年患者での反応性の低下や治療効果を阻害するおおきな要因ともなっている可能性が高い。この日中の眠気の増加による脳機能の低下は、生体リズムの異常によるものと加齢による覚醒機能の低下が考えられる。平成8年度は、加齢による生体リズムの機能低下が日中の眠気を増強し、覚醒水準を低下させ、脳機能を障害し、不眠老年者の社会的適応を阻害していることを明らかにするため以下の研究を遂行した。 精神機能が正常で顕著な身体疾患の認められない老年者400名の睡眠問題調査と社会適応度調査を行った。また、その一部で連続1週間以上のリスト・アクチグラフ(mini-motion logger actigraph)による活動量の計測と、携帯型深部体温測定装置(携帯用長時間体温ロガー)による体温リズムの測定を行った。活動量と深部体温の測定と同時に、日中の多数回のアルファ・アテニュエーションテストと反応時間テスト、ビジュアル・アナログスケールによる意欲、感情、覚醒度、食欲、疲労感に関する心理テストを行った。それにより、夜間睡眠中の体温が十分に低下せず、体温リズム振幅が低下している例が,不眠患者に多く見られること,日中の脳波解析や作業能力テストにより,このような老年患者では,脳機能の低下が認められ,社会的自信度や適応度が低下していることが明らかになった。
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