正常および分裂病モデルラットの脳をマイクロウエーブ照射後、脳の各部位を区分けし、過塩素酸(PCA)処理により脳内代謝物質を抽出した。酸抽出物は、分離、精製操作を行なわないで、直接、そのままNMR測定試料とし、高分解能NMR装置にて測定を行なった。この結果、脳内代謝物質に由来する150本以上のピークを得た。現在、これらのピークの帰属、同定を行なっているところである。定性的ではあるが、既に脳内の各部位別で差異や正常と分裂病モデルラット脳での差異に関する知見を得ている。マイクロウエーブ照射による酵素失活法は、極めて有効であり不安定な高エネルギー燐酸化合物等が安定に定量にできるようになったが、PCA抽出法により脳内代謝物質濃度に変動が見られることが分かった。このためPCA法の他、各種抽出法の比較も合わせて行なっている。この問題を総合的に研究した報告はこれまでないので、本研究を通じて明らかにして行きたい。また、複雑な不均一複合体である脳内代謝物質試料のスペクトル解析を進めるために既知の脳内代謝物質の標準スペクトルを測定し、スピン解析ソフトLAOCOON5によりNMRパラメータを求め、これらの情報をデータベース化することを試みている。既に重なり合った複雑なスペクトルを分離、定量するソフトの開発を行なっており、今後これらの情報を組み合わせることによりコンピュータによる脳内代謝物質の複雑なNMRスペクトルの自動解析、定量を行なうソフトも合わせて開発して行く予定である。
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