本研究は生体におけるグルココルチコイドホルモン応答性調節機構を、 1)グルココルチコイド受容体遺伝子の発現調節機構、 2)グルココルチコイド受容体と転写因子との相互作用、 3)グルココルチコイド作用発現におけるグルココルチコイド受容体の翻訳後修飾の意義、から解明することを目的とした。 1)グルココルチコイド受容体遺伝子がグルココルチコイドによって負の調節を受けることを確認した。かかるグルココルチコイド受容体のdown‐regulationとグルココルチコイドに対する生体の感受性には密接な関連が存在した。 2)プロテインキナーゼAの核内メデイエーターである転写因子CREBとグルココルチコイド受容体の相互作用の生理的意義の一部を明確にした。また、グルココルチコイドの抗炎症・免疫抑制作用にグルココルチコイド受容体と転写因子AP‐1(c‐fos/c‐jun)・NF‐kBの負の相互作用が重要であることも示唆された。 3)グルココルチコイド受容体において酸化ストレスによりDNA結合部分のシステインが酸化されDNA結合能を失うことが判明した。また、細胞内チオレドキシンは酸化ストレンスによって誘導され、グルココルチコイド受容体機能をup regulateする。 以上から、本研究成果は細胞レベルにおけるグルココルチコイドあるいはストレス応答の制御機構の概念に画期的な進歩をもたらすものと考える。さらに、かかる知見の発展的集積はグルココルチコイド作用のきわめて多彩な制御法開発、ひいては、グルココルチコイドの作用副作用の分離法開発にも直結する可能性が大であり、臨床医学的貢献度も高いと考える。
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