研究概要 |
【目的】リポ蛋白糸球体症は糸球体内にリポ蛋白血栓が出現し,高アポ蛋白E血症とネフローゼを示す新たな腎疾患である。アポ蛋白E異常に伴うリポ蛋白代謝異常がその成因に関与すると考えられることから、これらのアポ蛋白E構造異常について遺伝子解析の手法から検討した。 【方法】本症の症例KO(17歳)家系の3世代,およびMI家系の3世代に渡る家族調査を行った。さらに,これらの家系とは血縁のない3症例を対象とした.アポE表現型は等電点電気泳動法で検討した。アポE遺伝子型は白血球からgenomicDNAを分離した後、アポE遺伝子をPCR法で増幅し、制限酵素Hhalで切断して検討した。さらにPCRで増幅したDNAを用いてDNAシークエンスを行った。 【結果】症例KOのアポE表現型は2/3であったが、遺伝子型は3/3であった。したがって、アポ蛋白Eの構造異常が疑われた。アポE-DNAシークエンスではコドンArg145のPro変異を認めた。これを患者が在住する地名にちなんで、apo E Sendaiと命名した。3世代にわたるKO家族では父が本症の一例であることが判明し、同様の変異アポEを有していた。さらに未発症の2例(叔父・祖母)で同様の変異アポEが認められた。MI家系では母・祖母にapo E Sendaiを認めた.KO・MI家系以外のLPG症例3例にもapo E Sendaiを認めた. 【結論】apo E Sendai(Arg145→Pro)はこれまで報告の認められない新たなアポE変異体である。レムナントを増加させ、リポ蛋白糸球体症発症に密接に関係する。このことからも、本症は遺伝的要因に基づく新たな腎疾患であることが明らかになった。
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