研究概要 |
これまでの我々の検討により、脂肪細胞におけるGluT4の細胞内リサイクリングにおいてエキソサイトーシスおよびエンドサイトーシスともにGTP結合蛋白により調節されていることが示されたが,いかなるGTP結合蛋白が関与するかという点に関しては明らかでない。最近Cormont達により低分子量GTP結合蛋白のRab4がGluT4小胞に存在することが報告された。そこで7年度はGluT4のエキソサイトーシスにRab4が関与するかどうかについて検討した。Rabファミリー蛋白のC端にはRab蛋白の細胞内における局在を決定する配列が存在する。このためにRab4のC端アミノ酸20個からなるペプチドを合成し,これをエレクトロポレーションによりラット脂肪細胞内に導入してインスリン作用に対する効果を検討した。その結果、Rab4のC端ペプチドによりインスリンによるグリコース取り込みおよびGluT4のトランスロケーションがともに著明に抑制されることがわかった。Rab3CあるいはRab3DのC端ペプチドには抑制作用がないことから、この抑制はRab4に特異的であると考えられる。さらに1型組織主要適合抗原由来ペプチドD^k- (62-85)によりGluT4のエンドサイトーシスを完全に阻害した条件下においても、Rab4のC端ペプチドによるインスリン作用の抑制効果が見られたことから、GluT4のエキソサイトーシスにRab4が関与することが示された(J. Bio. Chem.印刷中)。Rab4のC端ペプチドはGTPγSによるグリコース取り込み促進作用も阻害した。また、Rab4のC端ペプチドに対する抗体を作製し、この抗体を脂肪細胞内に投与した場合にも同様にインスリン作用が抑制されたことから、インスリンによるGluT4のエキソサイトーシス促進作用へのRab4の関与が示唆された。
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