我々の検討により、ラット脂肪細胞におけるGluT4の細胞内リサイクリングにおいてエキソサイトーシスおよびエンドサイトーシスがともにGTP結合蛋白により調節されていることが示されたが、いかなるGTP結合蛋白が関与するかという点に関しては明らかでない。Cormontらにより低分子量GTP結合蛋白のRab4がGluT4小胞に存在することが報告されたことから、GluT4のエキソサイトーシスにRab4が関与するか検討した。Rabファミリー蛋白のC端にはRab蛋白の細胞内局在を決定する配列が存在する。Rab4のC端アミノ酸20個からなる合成ペプチドをラット脂肪細胞内に導入すると、インスリンによるグルコース取り込みおよびGluT4のトランスロケーションがともに著明に抑制された。Rab3CあるいはRab3DのC端ペプチドには抑制作用がないことから、この抑制はRab4に特異的である。さらにI型組織主要適合抗原由来ペプチドD^k-(62-85)によりGluT4のエンドサイトーシスを完全に阻害した条件下においても、Rab4のC端ペプチドによるインスリン作用の抑制効果が見られたことから、GluT4のエキソサイトーシスにRab4が関与することが示された。さらにインスリンによりRab4が活性化されるか検討するために、細胞膜を透過性にしたラット脂肪細胞に^<35>S-GTPγSを投与し一定時間インキュベーション後、Rab4を免疫沈降しRab4に結合した^<35>S-GTPγS量を測定した。Rab4への^<35>S-GTPγS結合量はインスリンの存在により約2倍促進され、このインスリン作用はPI3キナーゼ阻害剤であるワ-トマニンにより完全に抑制された。したがって、インスリンはPI3キナーゼを介する機構によりRab4を活性化しGluT4のトランスロケーションを促進することが示唆された。
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