(1)PTH受容体のin vitroでの発現 ヒトPTH受容体cDNAを発現ベクターpcDNA3にサブクローニングし、chinese hamster ovary(COS)細胞、およびhuman embryonal kidney(HEK)細胞に導入することにより、本cDNAを恒常的に発現する細胞株を得た。現在これらに細胞株を用い、ヒトPTH受容体に作用する物質の検索を行っている。 (2)偽性副甲状腺機能低下症のPTH受容体の検討 PTH受容体の異常に基づくと想定されてきた偽性副甲状腺機能低下症1b型患者のPTH受容体cDNAには変異は認められなかったものの、一部の患者ではPTH受容体の発現の低下が認められた。そこで本症患者におけるPTH受容体発現低下の機序を明らかにする目的で、本症患者のPTH受容体遺伝子プロモーター領域の異常の有無を検討した。ヒトPTH受容体遺伝子の5′端のクローニングにより、本遺伝子5′端には三つの非翻訳エクソンと少なくとも二つのプロモーターが存在すること、これらのプロモーターのうち一つは多くの組織で使用されているのに対し、もう一つは腎臓で特異的に使用されることが明らかとなった。一方偽性副甲状腺機能低下症患者のPTH受容体遺伝子のプロモーター領域のDNA配列は、健常対照と異ならなかった。従って、偽性副甲状腺機能低下症患者のPTH受容体発現の低下は、PTH受容体遺伝子プロモーター領域の異常に基づくものではなく、これらの領域に作用する核蛋白の量的、あるいは質的異常に起因するものである可能性が明らかとなった。
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