目的:アポEあるいはLDL受容体を欠損するマウス;(アポE+/+;LDL受容体+/+)、(アポE+/+;LDL受容体-/-)、(アポE-/-;LDL受容体+/+)、(アポE-/-;LDL受容体-/-)4系統からチオグリコレートの腹腔内注射後に腹腔マクロファージを調製し。アポEを有するβ-VLDLとアポEを有さないβ-VLDLはそれぞれ高コレステロール食で飼育した(アポE+/+;LDL受容体-/-)と(アポE-/-;LDL受容体+/+)のマウスの血漿から比重1.006g/mlでの超遠心法にて調製し、その細胞内への取り込みをACAT活性ならびに^<125>lで標識したリポタンパクの結合や取り込み・分解をもって定量した。また、これらのマウスの粥状動脈硬化病変を比較した。結果;アポEを有さないβ-VLDLは、ほとんどマクロファージによって取り込まれなかった。一方、アポEを有するβ-VLDLはLDL受容体を有する(アポE+/+;LDL受容体+/+)と(アポE-/-;LDL受容体+/+)由来のマクロファージによって取り込まれたが、LDL受容体を有さない(アポE+/+;LDL受容体-/-)や(アポE-/-;LDL受容体-/-)のマクロファージによってはほとんど取り込まれなかった。また、マクロファージ自身のアポE分泌能の有無はリポタンパクの取り込みに対して決定的作用を示さなかった。また、これらのマウスの大動脈に起こる粥状動脈硬化を生後1年のマウスを用いて比較したところ、(アポE+/+;LDL受容対+/+)には病変を全く認めず、(アポE+/+;LDL受容体-/-)では大動脈弓部のみに限局した病変、(アポE-/-;LDL受容体+/+)は40%面積、、(アポE-/-;LDL受容体-/-)は80%面積の病変を示した。結論:以上の実験結果から、β-VLDLのマクロファージによる取り込みにはリポタンパク上のアポEが極めて重要であり、その場合、LDL受容体が中心的異化経路であることが判明した。また、マウスにおいては、アポE欠損は著しく動脈硬化を促進するが、これに、LDL受容体欠損は相乗的に作用していることが明らかにされた。
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