研究概要 |
我々は、mRNAのdifferential display法を用いてヒト皮膚線維芽細胞における甲状腺ホルモン(T_3)応答性遺伝子(ZAKI-4と命名した)のcDNA断片をクローニングした。本研究は、皮膚線維芽細胞におけるT_3のZAKI-4mRNA発現に及ぼす作用やZAKI-4の組織分布、さらにZAKI-4cDNA全長のクローニングによりZAKI-4がコードする蛋白のアミノ酸配列を明らかにすることを目的とした。以下に本年度研究成果を列記する。 1.ヒト皮膚線維芽細胞を各種濃度のT_3存在下で培養すると、ZAKI-4mRNAはT_3添加後12時間以内にT_3の生理的濃度である10^<-10>Mで著明な増加が観察され、これ以上の濃度で濃度依存性に増加した。 2.ヒト各臓器におけるZAKI-4mRNAの組織分布をNorthern Blotにより検討した結果、心臓、脳、肝、骨格筋においてその発現が認められた。しかし、発現するmRNAの大きさは組織により異なり、心臓、脳および肝では1.4kbが、一方、骨格筋や線維芽細胞では3.4kbのmRNAが優位であった。 3.ZAKI-4cDNA全長のクローニングは、Rapid Amplification of cDNA End(RACE)法を用いて行い、ZAKI-4cDNAの全長3,184bp(polyA tailを除く)をクローニングした。次に、ZAKI-4cDNAの塩基配列を決定した結果、このcDNAには、1,023番目と3,168番目の塩基対にpolyadenylationシグナルが存在することが明らかとなった。この結果より、ヒト各臓器で認められた異なった大きさ(1.4kb,3.4kb)のmRNAの発現は、組織特異的alternative polyadenylationによるものであると考えられた。また、open reading frameの解析の結果、2つのサイズの異なるmRNAは、いづれも192個のアミノ酸をコードすること、これから類推されるZAKI-4蛋白の分子量は21.5kdであることが示された。
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