研究概要 |
1.Differential display法による甲状腺腫瘍の悪性化に関与する遺伝子の単離 甲状腺濾胞腫腺細胞株(1種)、乳頭癌細胞株(3種)、濾胞癌細胞株(1種)、未分化癌細胞株(2種)よりRNAを抽出した。それぞれのRNAよりdiifferential display法を用いて細胞間で発現量に差異が認められるバンドを切り出し、その塩基配列を決定した。約半分のクローンがリボゾームRNA、ミトコンドリア遺伝子、fibronectin,R-ras,プロテアソーム サブユニット、23kD highly basic poteinなどの既知の遺伝子で、残りのクローンは未報告の遺伝子であった。リボゾームRNAおよびミトコンドリア遺伝子を除いたクローンについてノーザン解析を行ったが、各種細胞間で2倍程度の発現量の差を認めらるものの、それ以上の発現量の差異は認められなかった。このように、これまでに数多くのプライマーの組み合わせを用いて、発現量に差が認められるクローンの単離に努めてきたが、大きな発現量の差が認められる遺伝子の単離には至っていない。今後、各実験ごとのパターンの再現性を高めるための方法の開発が必要である。 2.AP-PCR法による甲状腺未分化癌に特徴的なゲノム変化の検出 12種の甲状腺癌細胞株より抽出したゲノムDNAを鋳型として、任意の20merのプライマーを用い、PCRの最初の5サイクルのannealing温度を42°Cとする緩やかな条件で行ったPCR産物を電気泳動し細胞間のバンドパターンを比較した。甲状腺乳頭癌細胞株にシグナルの消失が見いだしたが、サザーン解析を行ったところ明らかな欠失は認められなかった。また、これまでに遺伝子増幅を示すシグナルは認められなかった。
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