1.ノザンブロット法によるPSFの発現の検討 ラットの各組織での検討では、脳、肺、腎、肝、脂肪組織、骨格筋と検討した全ての組織においてPSFの発現を認めた。特に、肺と腎において顕著であった。培養細胞では、血管平滑筋細胞および内皮細胞に強い発現を認め、線維芽細胞にも発現を認めた。ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを作成し、その腎と肺におけるPSF発現を対照と比較すると、糖尿病ラットにおいて腎でのPSF発現が低下していた。一方、肺においては糖尿病でのPSF発現の低下は認めなかった。培養血管平滑筋細胞を高濃度ブドウ溶液にて培養すると、対照と比較してPSF発現の有意な低下を認めた。 2.ヒト血清および培養細胞上清中のPSF存在の検討 PSF存在の有無を抗PSF抗体を用いたウエスタンブロット法にて検討した結果、ヒト血清中および培養血管平滑筋細胞や内皮細胞の上清中にPSFの存在を確認した。 3.免疫組織化学染色法によるPSF局在の検討 ヒト(剖検標本)やラットにおいては、PSFは主として中小動脈壁平滑筋細胞に局在していた。さらに、血管内皮細胞や気管支平滑筋細胞にもPSFの局在を認めた。ヒトを剖検標本を用いた検討では、動脈硬化や糖尿病を合併した症例の冠状動脈におけるPSF染色性が対照と比較して著明に低下していた。 4.PSFのELISA測定系 測定系はまだ確立されていないため、血中や組織中のPSF濃度と血管障害との関連性については結果が得られていない。 5.PSFのPGI_2産生刺激機序に関する検討 部分精製したPSFを用いて検討した結果、PSFは細胞外からのCa^<2->の動員を介して細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させ、PGI_2産生を刺激すると考えられた。
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