平成6年度までに、本邦において発見された遺伝性侏儒症ラットの病因として、GH構造遺伝子の点突然変異に基づく完全GH単独欠損を明らかにし、その病態のひとつとして、視床下部GH分泌促進因子(GRF)ならびにソマトスタチン(SRIF)遺伝子発現異常を解明した。正常ラットにヒトGRF遺伝子を導入したラット(hGRF-TgSD)を作出・継代・飼育し、その遺伝子発現ならびに内分泌機能を解析した。つぎに、hGRF-Tgとdrとの交配により、ヒトGRF遺伝子導入の遺伝性侏儒症ラット(hGRF-Tg dr)雄4匹、雌3匹を得、さらに、飼育繁殖した。 平成7年度では、1)本hGRF-Tg drの血中ラットGH濃度は測定感度以下。一方、血中hGRF濃度は異常高値であること、2)本hGRF-Tg drの体軸方向への成長は対照のdrと比較して変化がなく、同週齢の正常SDラットと比較して体重は約1/4(雄、生後3カ月)であること、3)生後6-9カ月以降の同hGRF-Tg drではhGRF-TgSDと同様に、そのほぼ全個体に下垂体腺腫が発生することなどが明らかとなった。下垂体腺腫の正常を免疫組織化学的手法を用いて解析したところ、HE染色上、一部の細胞に細胞分裂像を伴い、sinusoidパターンを示す好酸性(acidphilic)腺腫で、hGRF産生以外はGH/LH/FSH産生は認められず、極く少数のPRL/ACTH細胞が混在していた。本症ラットに発生する腺腫は、pure GRF-producing下垂体腺腫と診断した(東海大学病理、長村博士の協力を得た)。本研究結果より、GRFの長期、高濃度の刺激によりGH非異存性に下垂体腺腫が発生することが初めて明らかとなった。
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