研究概要 |
本研究はIRS-1遺伝子をノックアウトしたマウス(IRS-1null)を用いて、インスリンによる糖輸送活性化機構における細胞内情報伝達機構と糖輸送坦体(GLUT)のなかでもGLUT4の細胞内から細胞膜上への移動機構を解明することを目的とした。 IRS-1nullマウスの脂肪細胞におけるインスリンによる糖輸送活性化機構の検討 1 糖輸送活性(^<14>C glucose uptake)はIRS-1nullの単離脂肪細胞で最大刺激に対する糖輸送活性は約50%であり、インスリン反応性の低下(wild type約10倍、IRS-1null約4倍)、さらにインスリン容量反応曲線は右方移動していた。またインスリン非添加状態(basal glucose transport activity)は上昇しており、IRS-1nullマウスではインスリン抵抗性を示した。 2 細胞内膜分画を精製し、GLUT1とGLUT4に対する特異抗体によりimmunoblotら検討した糖輸送坦体の移動では細胞膜分画のGLUT4はIRS-1nullマウスにおいてbasalで軽度増加、インスリン刺激(1nM)によりwild typeの約60%と低下していた。細胞全体のGLUT4量には変化を認めなかった。 リン酸化蛋白の経時変化とPI-3kinase 抗リン酸化チロシン抗体によるリン酸化蛋白の検討では180kDa、95kDa,60kDaにWild typeではリン酸化、脱リン酸化蛋白が認められたが、IRS-1nullマウスでは95kDa、60kDaでは同様のであったが、180kDa付近のbandは弱かった。PI-3kinase活性は10-9から10-7Mまでのインスリン刺激で実験をおこなったが、Wild typeでは用量反応的に活性増加が認められたが、IRS-1nullマウスでは10-7M刺激でもWild typeの50%以下の活性にとどまっていた。
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