研究概要 |
糖尿病性腎症の成因におけるAGEs (Advanced glycation end products)の関与について検討する目的で、AGEs構造同定物の1つであるクロスリン(XL)に対するXL抗体を用いて研究を行った。XLはlysineとlysineを架橋する2分子のD-glucoseよりなり、蛍光性(ex 379, em 463nm)を有する。XL抗体は他のAGEs構造同定物であるペントシジン,ピラリンなどとは反応しない。 (1)糖尿病性腎症成因におけるAGEsと生体NO産生の関与:ストレプトゾシン(SZ)糖尿病ラットでは、経時的にアルブミン尿排泄と腎皮質XL生成が増加した。尿中NO (U-NO3)とcGMP排泄はGFR(糸球体濾過率)が亢進している2週において増加していた。また、SZ糖尿病ラットへのNO産生阻害物質N-nitro-arginine (NNA)投与により、SZ群において増加したGFR, RBF(腎血漿流量), U-NO3は抑制された。さらに、SZ群での腎皮質NO合成酵素(C-NOS)の亢進がNNA投与により是正された。以上の結果から、腎症の成因に腎AGEs生成及びNOが関与することが示唆された。 (2)生体試料のXL定量:生体XL生成量を定量的に測定するために拮抗ELISA法を確立した。本法によりヒトおよび動物の血清、赤血球膜蛋白および組織蛋白中のXL生成量を高感度で測定(pmol/mg)でき、糖尿病では非糖尿病に比しこれら蛋白中XL生成量が増加していることが判明した。今後腎症を含めて糖尿病性合併症発症機序におけるAGEsの関与を前向き研究で検討できる。
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