1)Sheehan症候群(Sheehan)5例(いづれも汎下垂体機能低下症)、ACTH単独欠損症(IAD)4例、および健常人5例より血清を採取した。これらの血清からprotein-A columnを用いてIgGを精製した。(2)正常ラット下垂体前葉細胞の単層培養系をを用いて、上記各患者のIgGの合成CRH、GRH刺激時のcAMP産生に対する作用を検討した結果、Sheehan3例、IAD3例でCRH刺激時のcAMP産生が抑制された。GRH刺激時のcAMP産生はSheehan2例で抑制がみられたが、IADではいづれの例でも抑制はみられなかった。健常人でも各1例でCRHおよびGRH刺激時のcAMP産生の抑制がみられた。3)上記IgGより得たFabとperoxidaseを結合したFab-peroxidaseを用いた正常ヒト下垂体組織での免疫染色については現在検討中である。4)単層培養系での結果はSheehan、IADの病因として視床下部ホルモンの下垂体に対する作用の阻害抗体の関与を示唆するが、実験系の特異性になお検討の余地がある。
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