【目的】ヒト及びラット下垂体前葉ACTH細胞におけるCRF受容体発現の生理的及び病態生理的調節機構を解明する。 【方法と結果】 (1)ヒトゲノムライブラリーからType1 CRF受容体遺伝子のクローニングを試みた。その結果、少なくとも11個のexonが存在すること、CRF受容体遺伝子の全長は7kb以上あると考えられた。 (2)ラット副腎を全摘し、糖質コルチコイドのネガティブフィードバックを解除すると、下垂体前葉のtype1 CRF受容体mRNAレベルは速やかに減少し、術後14日目でコントロールレベルに回復した。 (3)ラット下垂体前葉培養細胞のtype1 CRF受容体mRNAレベルは、CRF、VP、cAMPによりdown-regulateされた。一方、培養したCushing病下垂体腺腫細胞では、VPでdown-regulateされたが、CRF、cAMPでは逆にup-regulateされた。デキサメサゾンは両方の細胞共、type1 CRF受容体mRNAレベルをdown-regulateさせた。 【考案】 (1)type1 CRF受容体遺伝子の5′側は未だ十分な長さのDNAがとれていない。今後プライマーを変え、更に長いDNA採取を試みる。 (2)下垂体ACTH細胞のType1 CRF受容体遺伝子発現は、cAMP系によりdown-regulateされるが、Cushing病のように腫瘍化すると、cAMP以降のステップでの異常が原因でup-regulateされる。一方Cキナーゼ系は腫瘍化してもdown regulation作用は変わらない。このような腫瘍化によるcAMP以降のメカニズムの異常が、ネルソン症候群のような腺腫の増大に関与している可能性について、今後更に検討する予定である。
|