乳癌組織では、アロマターゼの組織特異的多重エクソン1のスイッチングが有意に癌組織周辺部異でのアロマターゼ発現亢進に寄与していることを明らかにした。乳房組織由来の初代培養脂肪間質細胞を無血清培養下に置くことにより、癌周辺組織で観察されたアロマターゼの多重エクソン1のスイッチングと発現亢進を再現することが出来たので、新たに開発した各多重エクソン1のプロモーター活性、選択的スプライシング解析用ベクターを用い、このアロマターゼ遺伝子多重エクソン1のスイッチングと発現亢進の分子機構を解析した。正常乳房組織の脂肪間質細胞のアロマターゼ発現においてはエクソン1bが選択されているので、このエクソン1bのプロモーター領域の組織特異的発現制御を担うDNA部位をさらに調べた。エクソン1b上流255bpを含むプロモーター領域ではレポーターの転写系でもスイッチングが起き、エクソン1bからの特異的転写開始はほとんど観察されず、エクソン1cや1dからの転写開始が観察された。しかし上流1145bpまでを含むプロモーター領域ではレポーターの転写は正常な脂肪間質細胞の多重エクソン1選択性を反映して、ほとんどエクソン1bから開始されるようになった。このことはエクソン1bのプロモーター領域で上流255bpから1145bpまでの間に組織特異的発現調節、選択的スプライシングを規定する制御因子が結合するDNA部位が存在する事が明らかになった。また骨粗鬆症・動脈硬化症など加齡に伴う疾患との関連で注目される骨及び血管組織におけるアロマターゼの局在が蛋白質及びmRNAのレベルで証明された。その発現は、アロマターゼ遺伝子のエクソン1b上流のプロモーター領域により発現制御されており、これらの加齡に伴う疾患においてもその病因としてアロマターゼ発現異常が関与する可能性が示唆された。
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