研究概要 |
我々はヒト破骨細胞様細胞のcDNAライブラリーから破骨細胞形成を促進する因子としてAnnexin IIを同定した(J.Biol.Chem.269:28696,1994)。Annexin IIは破骨細胞様細胞の形成を促進し、骨吸収促進作用も示すことも明らかにした。一方、従来細胞質内蛋白と考えられていたAnnexin IIがラット乳癌細胞を含む種々の細胞の細胞膜外に発現され、細胞外マトリックス、内皮細胞等への接着に関与していることも明らかになっている。そこで我々は乳癌細胞がAnnexin IIを発現して破骨細胞形成を促進し骨転移病巣の形成を促している可能性を検証するために以下の検討を進めた。1)乳癌細胞株がAnnexin IIを発現することが、mRNAレベル(Annexin II cDNAによるNorthern blot)及びに蛋白レベル(抗Annexin II抗体によるWestern blot,Flowcytometry)で確認された。2)マウス乳癌細胞とマウス骨髄、脾細胞の共存培養の系を確立し、Annexin IIの発現と破骨細胞形成促進能の相関の検討を行い、さらにAnnexin IIのsense-,antisense-plasmidを乳癌細胞に導入したサブクローンを確立した。このサブクローンはannexin IIと破骨細胞形成との関係を明らかにする上で特に有用と考えられ、共存培養における破骨細胞形成促進能の検討を開始した。3)ヒト乳癌の臨床サンプルを集積しつつあり、乳癌原発巣でのAnnexin II mRNAの発現をまず確認した。さらに、乳癌原発巣および骨転移巣サンプルでのAnnexin II発現について、Annexin II抗体による免疫組織学的検討を開始した。
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