ラットの膵ランゲルハンス氏島をコラゲナーゼを用いて単離し、軽度の細胞分散を行ない数十〜数百個のβ細胞よりなる細胞塊を選びFura-2を用いて、β細胞内カルシウムを測定した。刺激物質として、16.7mMブドウ糖を表面潅流により使用し、非刺激時と、刺激時の細胞内カルシウムの変動と、ある細胞から隣接する細胞へのカルシウム波の伝播様式をvideo-imaging法により観察した。高濃度ブドウ糖刺激に対して、ある膵β細胞の細胞内カルシウム濃度が上昇し、それがカルシウムの波となって、gap junctionを介し、周囲の細胞に伝播してゆくが、その伝播様式として、同心円状にどの方向にも一様な速さで広がっていく場合もあるがそれ以外にある決まった方向にのみ波が伝播する傾向があって、他の方向には広がりにいく場合もあり、このことより、同じβ細胞でも、カルシウム波を伝播し易い細胞群と伝播しにくい細胞群とが混在している可能性が考えられる。このことは以前より、インスリン分泌能に関して、膵β細胞のheterogeneityの存在が指摘されているが、このこととも合致し、また見方を変えれば心臓における刺激伝導路に類似したものが、膵ラ氏島内にも存在する可能性があると考えられる。また、正常ラットのラ氏島と同様にNIDDMモデルラットよりのラ氏島を用いた実験を行ったが、β細胞数が少数であるため、十分なデータを得ることはできなかったけれども、正常群に比し、細胞内カルシウムの波の細胞間の伝播が障害されている傾向がみられた。
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